
役割から導き出したカタチ
-「究極の削ぎ落とし」が生む美しさ -
このTILLもかなり息の長いプロダクトですが、そもそもどんな経緯で製品化になったんですか。
デザインユニット mute の発表した傘掛けですが、この時の展示会では、スチールの棒を曲げて読みかけの本をハンギングするホルダーなど、見た目もシンプルで製品の構成要素もミニマムで装飾がなく、黒く塗装されたプロトタイプが目を引きましたね。
ローンチ(発売日)順でみると前年に、MUKOUという傘立てを発表したばかりですが、また傘立て(ホルダー)?と、ブランドのラインナップとしては、普通選ばないと思いますが…。
確かに一般的には傘立ての翌年に傘掛けって(笑)、違和感はあるかと思いますし、僕もそう思いましたけど、このTILL と名付けられたプロダクトのデザインを見て、これは製品化したいなと思いました。
-プロトタイプでそんなに完成していたんですか?
見た瞬間に置く場所、使いかた、使い勝手、この製品あったら絶対いいじゃん。と感じたのと、「プロダクトの使い道以外の要素は、いらない!」という潔よさにそそられた、というか。
使いやすさを追求したら、この製品はどっちつかずで格好が悪くなるのも素直に理解できた気がしますね。

どっちつかずになる、という感覚、なんとなくわかります。それは理由があるんでしょうかね?
そこは結構DUENDEの開発でも、最も重要なポイントだと思うので、簡単には教えたくないですねー。(笑)
そこをなんとか、(笑)
単なるオブジェじゃないプロダクトには、どんな製品にでもそいつの役目がありますので。
んー、ちょっとわかりにくいかもしれないけどプロダクトが叶えたい役目を果たすためには、欠かせない要素があるわけで…。
いわゆるプロダクトの機能と関係しますよね?
プロダクトが叶えたい役目=傘を掛けて保持する。
その役目を果たす要素となるのが横棒という事ですね。これが斜めだったら保持できないから、水平であることが要素の条件になりますね。

なるほど!言われてみれば。
もし傘を一本だけ保持するのを目的としたら、要素はフック的な事でもいい訳ですね。
確かにそうなりますね。そうなると全く違うデザインに向かう訳ですよね
そうなると思いますね。
傘一本だけ保持できる傘掛けなら、ドアの取っ手でいいだろって話かもしれないけど、(笑)。
確かに(笑)。
一本掛けの傘掛けは置いておいて、傘を数本引っ掛けるだけを目的としているなら、昔の手ぬぐい掛けみたいな壁に20センチくらいの横棒を取り付ける方法もありますが。
ああ、それ実家の洗面所にありました。(笑)
そう、必ずあったよね(笑)。
我々が目的としているのは業務用とかではなく、インテリアとして家で使うプロダクトなので、生活が良くなる必要があると思っています。
家庭用のプロダクトとして考えられた製品になりますもんね。

そうですね。
TILLの場合は、そうゆう役割の要素を考えていった時に、横棒は、床から伸びた一本のスチールの棒を、直角に曲げることで、叶えてありますね。
それを、もう一回上に曲げることで、その上に別の役目を持たせることが出来るという発見だったんだと思います。
そうゆうことか。
そう考えるとデザインと機能性の融合みたいなところが見えてきます。
もう一回曲げたその上に、水平で小さなプレートがあれば、なんか置けるよね。
傘は玄関先に置くものだし、その上にプレートがあれは、鍵などのホルダーをちょっと置いておいたり、フレグランスとかや、時期によっては小さなクリスマスの飾りなんかが置いてあったらいいよね。

玄関先にちょっとなにか乗せておけるスペースは考えるだけで重宝しますよね。
出掛けるまでの間、ちょっと待ってて、という意味合いでTILL。これは、このプロダクトのデザインを手がけたユニットmuteのお二人がつけたネーミングです。
そういう意味でTILLなんですね。先ほどの、どっちつかずになるというあたり、深掘りしてもいいですか?
TILLのデザインは、掛ける、置く。という役目を果たす、それ以外は完全に削いだデザインだと思います。
床から伸びた棒を直角に曲げることで棒を水平に、それをもう一度曲げて、上部にプレートを付ける。そこからどんどんシンプルに、床のプレートは円形にし、プレートは長方形にするなど、プロダクトとしてのバランスを突き詰めたデザインだと思います。
そこにもっと便利に、とか使い易いとかを欲張ると、どっちつかずに向かうんだと思いますね。
そうゆうことなんですね。
特にTILLは、究極に削ぎ落としたことで、似たような製品というか、ああ(笑)、完全にこれの真似だよね、みたいなプロダクトが出来ても、どっちつかずで、圧倒的に格好悪いと思うし。
そういった製品は、いずれ世の中から消えていく運命だと思いますね。
2011年発売開始というと、えー、そんなに前のデザインなんですか、そんな風に見えないですねって、よく言われるし、僕もそう思うんですよ。
でも古さを感じないのは、究極削ぎ落とし、muteのお二人が、デザイナーとしての力を発揮してバランスを何度も見て、到達したプロダクトなので、デザインとしての完成度、美しさは、これがベストである、という答えだと思うんです。
なるほど、試行錯誤で考え抜かれたオリジナルを参考に真似たとしても、敵わない。
まあそこはあまり掘らないほうがいいと思うので(笑)。
ずっとそばにあるわけで、毎日目にして部屋の中に存在するインテリアを、僕は残念に思いながら使い続けるのではなく、やっぱりこの製品はいいよな。と感じて長く使い続けたいほうなので、そんなに特別高いものは購入しませんけど、気に入った製品を頑張って買いますね。
DUENDEのプロダクトは個人的にユーザー目線で見ても、デザイン性やプロダクトの役目としても、結構優れていると思いますよ。
別の機会に、また他のプロダクトやインテリアのこだわりについてなども聞かせてください。

